地球規模のエネルギー問題を解決し、持続可能な脱炭素社会を実現する上で、エネルギーの貯蔵・変換効率化は重要な課題です。そのため、世界中で光触媒や太陽電池、化学エネルギー生産、代替エネルギーに至る広い分野に関連して、効率的な電子移動媒体に関する学術的・実用的な研究が展開されています。

7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに

『エネルギーをみんなに そしてクリーンに』

2015年に国連総会で採択された地球規模の持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)では、温暖化対策を成長につなげるクリーンエネルギー戦略を策定しています。

当研究室では、この目標に向けて、効率的な電子移動・エネルギー移動に関する研究を展開し、次の分野で貢献することを目指しています。

  • 電子移動触媒(Electron Transfer Catalyst)
  • 生物模倣型電子移動補酵素(Biomimetic ET Coenzyme)
  • 太陽光エネルギーの活用(Solar Power)

人工の電子移動媒体の中で、光合成中心を担うユビキノンの反応モデルのように、生物を模倣したQuinone―Hydroquinone(Q―H2Q)の酸化還元は、真に効率的なエネルギー変換を実装するための有望なメカニズムの一つです。他方、好気性生物は酸素分子(O2)を利用することで大きなエネルギーを生み出し、飛躍的な進化を遂げてきました。“生体内電子伝達系”では、キノイド系補酵素複合体を介し、食物を“燃す”ことなく、O2によって効率的に代謝・伝達してエネルギー源に変換しています。

Fig.1. Energy profile along the reaction coordinate of PCET with the tunneling effect.

O2は、電子(Ⅰ)とプロトン(Ⅱ)を受け取り最終的に水へと代謝される過程で、大きなエネルギー障壁を迎えます(Fig.1)。一般に障壁を超えるために投じられたエネルギーの大半は、仕事をすることなく熱として放出(燃す)されますが、生物はエネルギー障壁に存在する量子トンネル(反応経路の抜け道)を使い、エネルギーを無駄なく仕事量に変換することを得意としています。その反応の中核をなすキノイド―酸素化学種間のエネルギー移動は、理論上、最大のエネルギー効率を実現することのできる、最も期待される生物模倣型エネルギー変換手法であり、重要な研究対象であり続けています。

その中でも、酸素の一電子還元体であるsuperoxide radical anion(O2•−)と還元型キノンであるH2Qは、プロトン電子共役移動反応(proton-coupled electron transfer: PCET)のトンネル効果を介した効率的なエネルギー移動を実現することが明らかとなりつつあります。そこで当研究では、このO2•−-H2Q間のPCET反応を更に効率化する要素を明らかとし、エネルギー貯蔵・変換を担う電子移動触媒の開発のための知見を得ることを目的としています。

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