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論文名「Effect of the phenyl substituent on two-proton-coupled electron transfer between hydroquinone and superoxide radical anion」

プロトン電子共役移動反応(proton-coupled electron transfer: PCET)は、生体エネルギー変換から触媒、材料科学に至るまで、様々なプロセスにおいて重要な役割を果たしている。本研究では、2-フェニルベンゼン-1,4-ジオール(phenyl-hydroquinone: Ph-H2Q)と電気化学的に生成されたスーパーオキシドラジカルアニオン(O2•−)とのPCET反応を通じて、ヒドロキノンの反応性に対するフェニル置換基の影響を検討した。N,N-ジメチルホルムアミド中でのサイクリックボルタンメトリー(CV)およびin situ電解電子スピン共鳴(ESR)分光法を用いた解析により、Ph-H2Qが協奏的な2プロトン共役電子移動(2PCET)を経ることが示された。CV測定においては、Ph-H2Qの存在下で通常可逆的に観測される酸素/O2•−レドックスカップルが不可逆となり、Ph-H2QからO2•−への初期のプロトン移動(proton transfer: PT)に続いて電子移動およびさらにもう一つのPTが進行し、キノンラジカルアニオン(Ph-Q•−)が生成することが示唆された。ESRスペクトルでは、特有の超微細分裂によりPh‑Q•−の生成が確認され、フェニル環へのスピン非局在化は顕著ではなかった。さらに、密度汎関数理論(DFT)計算により、Ph-H2Qにおける2PCET経路に沿ったフロンティア軌道エネルギーの変化は、非置換ヒドロキノンと類似しており、フェニル基による電子誘導効果や共鳴効果などの置換基効果が最小限であることが示された。フェニル置換基は電子的には水素と類似しているが、その立体障害の大きさにより高濃度下でわずかに反応性が低下することが観察された。熱力学的解析により、全体として2PCET過程が発エルゴン反応であることも確認された。これらの知見は、PCET反応におけるフェニル置換基の微妙な役割を明らかにし、ヒドロキノン誘導体を基盤とするレドックス系の合理的設計への示唆を与えるものである。

キーワード:ヒドロキノン、電気化学、スーパーオキシドラジカルアニオン、プロトン共役電子移動

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