論文名「A theoretical study of the reactivity of 5-fluorouracil toward superoxide radical anion and hydroperoxyl radical」がStructural Chemistry誌（Springer Nature）に掲載されました。

がんの治療に広く使用されている 5-フルオロ-1H,3H-ピリミジン-2,4-ジオン (5-フルオロウラシル) の、スーパーオキシドラジカル アニオン (O₂^・-) およびヒドロペルオキシル ラジカル (HO₂^・) に対する反応性が、密度汎関数理論 (DFT) 計算を使用して調査されました。 5-フルオロウラシルは、癌細胞に対する細胞毒性効果と、自然環境にとって難解な化合物としての潜在的な生態毒性を持つピリミジン類似体です。 したがって、その化学分解メカニズムを in vivo および in vitro 実験で解明することは困難ですが、さらなる用途には重要です。 DFT の結果は、水中での O₂^・- または HO₂^・による 5-フルオロウラシルの酸化が、プロトン結合電子移動 (PCET) 機構を通じて実現可能であることを明らかにしました。 さらに、5-フルオロウラシルと O₂^・-のプロトン化を介して形成される HO₂^・間の協調的な PCET 経路が提案されています。 この経路では、5-フルオロウラシルの最初の位置にあるアミン基が、水素結合を介して前反応性錯体を形成した後、協調型 PCET の反応部位として機能します。 PCET 経路に沿った実際の酸化剤は寿命の短い HO₂^・であることを考慮すると、O₂^・- (HO₂^・) による 5-フルオロウラシルの生分解性は、錯体形成ステップと協調した PCET によって支配されます。

• Tatsushi Nakayama
• Structural Chemistry, Volume 35, pages 65–73, (2024)
• DOI: doi.org/10.1007/s11224-023-02248-3